特定危険指定暴力団・工藤会が拠点を置き、市民を狙った凶悪犯罪が相次いだ北九州市。14年以降に工藤会幹部らが次々と摘発され、今月24日にはトップら2人への判決が予定される。暴力団の影は薄れ、かつて「修羅の国」とも揶揄(やゆ)された街に変化が起きている。
新型コロナ対策のまん延防止等重点措置が解除された7月の夜。北九州市・小倉駅前の繁華街は、飲み歩くサラリーマンや若者でにぎわっていた。ドレスや着物を着た飲食店勤めの女性や、酔客を乗せたタクシーが、ネオンに照らされた路地を行き交う。どこでも目にする盛り場の光景だ。
ある飲食店の店長は「街でヤクザを見るなんてもうないですよ」と笑った。
かつて自動小銃やロケット砲も
かつては黒塗りの車があちこちで見られ、組員らが縄張り維持のため、夜に繁華街を練り歩いていた。だが最近は、組員らが夏はそうめん、年末は数の子を高値で売りつけに来ることもなくなったという。
「今はヤクザと付き合ってるというだけで、反社会的勢力って思われる時代。信用を失うけぇ、付き合えんですよ」
工藤会は、工業で発展した北九州地域を地盤に、建設会社や飲食店などから巨額の資金を吸い上げてきた。福岡県警によると、ピークの2008年には県内で1210人もの構成員・準構成員らを抱えていた。
付き合いをやめようとする市民には容赦なく暴力を振るい、建設会社役員が射殺されたり、飲食店関係者が襲われたりした。組織の関係先から自動小銃や対戦車用ロケット砲が見つかったこともあり、ネットなどでは北九州市が「修羅の国」と呼ばれたこともあった。
県警は工藤会を壊滅させるため、14年9月から幹部らを摘発する「頂上作戦」を開始。野村悟総裁(74)らを次々と逮捕した。今年5月末までに摘発した工藤会関係者は約390人にのぼる。20年末の県内の構成員・準構成員らは430人にまで減少した。
増える「暴力団お断り」
その効果が徐々に表れ始めて…
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Source : 社会 – 朝日新聞デジタル